「完全歩合」の求人はやめとけ? 未経験で入る前に見る条件と見送る線
「完全歩合で月収100万円も可能」「フルコミッションだから頑張った分だけ稼げる」。こうした求人は魅力的に見えますが、未経験で入ると、売れない月の収入がほとんどない、ということが起こりえます。じつは、会社に雇われて働く人の場合、法律で「完全歩合」にはできない決まりがあります。この記事では、法律の決まり、業務委託との違い、収入の計算の例、求人票と面接で確かめること、「この条件なら見送る」線をまとめました。
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「完全歩合」とは
完全歩合は、決まった基本給がなく、売上や契約の数に応じた分だけが収入になる働き方です。「フルコミッション」「フルコミ」とも呼ばれます。
求人でよく見る言葉
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 完全歩合・フルコミッション | 基本給なし。成果に応じた報酬だけ |
| 歩合給・インセンティブ | 基本給とは別に、成果に応じて上乗せされる分 |
| 出来高払い | 作った数・運んだ数など、仕事の量に応じて払う方法 |
| 業務委託・個人事業主 | 会社に雇われず、仕事を請け負う形 |
固定給と歩合を組み合わせた求人の読み方は、「歩合制・インセンティブ」の記事にまとめています。
責任者
法律の決まり:雇われる人は「完全歩合」にできない
会社に雇われて働く人(労働者)には、労働基準法と最低賃金法が当てはまります。そのため、成果がゼロなら給料もゼロ、という払い方はできません。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 保障給(労働基準法第27条) | 出来高払いや歩合で払う場合でも、会社は働いた時間に応じて一定の額を保障しなければならない |
| 最低賃金(最低賃金法第4条) | 歩合で払う場合も、給料の合計を働いた時間で割った額が、都道府県ごとの最低賃金を下回ってはいけない |
| 残業代(労働基準法第37条) | 歩合で払う場合も、法定の時間をこえて働いた分の割増賃金が必要 |
| 社会保険・労災保険 | 条件を満たせば加入する。仕事中のけがは労災保険の対象 |
保障給の額について、国の通達は「ふだんの収入と大きく離れない程度」を保障するよう求めています。最低賃金は毎年改定されるので、最新の額は厚生労働省のページで確かめてください。
出典:労働基準法第27条・第37条、最低賃金法第4条、労働基準法施行規則第19条、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」。
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求人を紹介してもらう業務委託の「完全歩合」とは何が違うか
完全歩合の求人の多くは、会社に雇われない「業務委託」の形です。この場合は労働基準法が当てはまらず、保障給も最低賃金もありません。
| 雇われて働く(正社員など) | 業務委託(個人事業主) | |
|---|---|---|
| 収入の下限 | 保障給・最低賃金がある | ない(売れなければ0円もありえる) |
| 残業代 | ある | ない |
| 社会保険 | 会社の健康保険・厚生年金 | 自分で国民健康保険・国民年金 |
| 経費 | 会社が払う | 交通費・電話代などを自分で払うことが多い |
| 税金 | 会社が給料から差し引く | 自分で確定申告 |
名前は業務委託でも、中身で決まる
契約書が「業務委託」でも、働く時間や場所を細かく決められ、指示どおりに動いているなら、法律では労働者と判断されることがあります。見られるのは、仕事を断れるか、指示の強さ、時間と場所の縛り、ほかの人に代わってもらえるか、などです。
2024年11月からは、フリーランスと取引する会社に、条件を書面などで示すことや、決まった期日までに報酬を払うことを求める法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)も始まっています。
出典:労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年)、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2024年11月1日施行)。
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全国のデータ:残業の割増率と、営業職が多い業種の給料
雇われて働く人の場合、歩合で払われていても残業の割増は必要です。国の調査では、残業の割増率を決めている会社のうち94.2%が「25%」でした。
出典:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」(第14表)。
営業職が多い業種の給料(参考)
| 年齢 | 全体 | 卸売業・小売業 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 23.25万円 | 23.06万円 |
| 25〜29歳 | 26.72万円 | 26.61万円 |
決まって払われる給料(残業代などを除く)の平均です。その業種で働く人全体(職種を問わない)の数字なので、営業職だけの数字ではありません。完全歩合の求人に書かれた「月収100万円」は、この平均と比べてかなり上の、一部の人の例と考えておきましょう。
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(一般労働者・男女計・所定内給与額)。
計算で見る:完全歩合の手取りは「経費」で変わる
業務委託の完全歩合で、売上の30%が報酬になる例を考えます(計算のための例です)。
| 売れた月 | 売れなかった月 | |
|---|---|---|
| 自分の売上 | 200万円 | 30万円 |
| 報酬(30%) | 60万円 | 9万円 |
| 経費(交通費・電話代など) | −5万円 | −5万円 |
| 国民健康保険・国民年金(目安) | −4万円 | −4万円 |
| 手元に残る額 | 約51万円 | 約0万円 |
税金はさらに別にかかります。売れなかった月は、経費と保険料でほぼ0円になることがわかります。
雇われて歩合で働く場合の残業代
雇われて歩合で払われる人の残業代は、歩合給÷その月に働いた時間×0.25×残業時間で出します。歩合給24万円・月200時間(うち残業40時間)なら、24万÷200×0.25×40=1.2万円です(基本給の分の残業代は別に計算します)。
計算で見えること
- 完全歩合は、売れない月の手取りがほぼ0円になりえる
- 経費と保険料を自分で払うかどうかで、手取りは大きく変わる
- 雇われていれば、歩合でも残業代と最低賃金がある
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求人を紹介してもらうなぜ「やめとけ」と言われるのか
完全歩合そのものが悪いわけではありません。経験と顧客がある人には、稼げる働き方です。ただ、未経験の20代には次の点で合わないことが多くあります。
| よく聞く声 | 実際に起きやすいこと |
|---|---|
| 最初の数か月、収入がほぼなかった | 仕事を覚えるまで売れず、生活費が足りなくなる |
| 研修がなかった | 教える人の収入にならないので、教えてもらえない |
| 経費が思ったよりかかった | 交通費・電話代・名刺代などを自分で払う |
| 正社員だと思っていた | 入ってから業務委託の契約だと知る |
| 辞めたくても辞めにくい | 研修費の返金や違約金を求められる |
とくに「正社員だと思っていた」は、求人票の書き方で防げます。雇用形態の欄を必ず見ましょう。
未経験歓迎希望に合う求人を、ご紹介します希望の職種と連絡先を入れるだけ。営業・事務・IT・施工管理などから、担当者がお探しします。 求人を紹介してもらう求人票の実例を読む
「完全歩合」が出てくる、よくある書き方を3つ取り上げます(実在の会社の求人ではなく、よくある書き方の例です)。
| 求人票の書き方 | 読み方 | 面接で聞くこと |
|---|---|---|
| 雇用形態:業務委託/報酬:完全歩合(売上の30〜50%) | 雇われない形。収入の下限はない | 経費の負担と、売れた人・売れない人の割合 |
| 雇用形態:正社員/給与:完全歩合制 | 雇われる人に完全歩合は使えない。書き方が正しくない | 保障給の額と、最低賃金の計算 |
| 正社員/月給20万円+インセンティブ(月平均5万円) | 固定給に上乗せの形 | インセンティブの計算方法と、平均の出し方 |
2つ目のように「正社員なのに完全歩合」と書かれた求人は、決まりを知らずに書いているか、実際は業務委託の可能性があります。
求人票と面接で確かめること
雇用形態と契約書の名前
正社員・契約社員なのか、業務委託なのかを、契約書の名前まで確かめます。
収入の下限
雇われるなら保障給の額、業務委託なら最初の数か月の支え(固定の報酬など)があるかを聞きます。
経費の負担
交通費・電話代・資料代を、会社と自分のどちらが払うかを確かめます。
入った人のその後
入って半年後、どのくらいの人が続いているか、収入はどのくらいかを聞きます。
面接で直接聞きにくいことは、弊社エージェントが代わりに確認します
- 入った人の、最初の3か月の収入
- 経費のうち、自分で払うもの
- 契約書の名前と、雇用形態
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求人を紹介してもらう入社したあとにやること
歩合のある働き方で働き始めたら、働いた時間と、受け取った額を自分でも記録しましょう。
| 確かめること | どこで見るか |
|---|---|
| 歩合の計算の決まり | 雇用契約書・業務委託契約書、賃金規程 |
| 働いた時間 | 勤怠の記録、自分のメモ |
| 保障給・残業代 | 給料の明細 |
責任者
困ったときの相談先
保障給がない、時給にすると最低賃金を下回る、業務委託なのに指示どおりに働かされている、などで困ったときは、公的な窓口に無料で相談できます。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署の中) | 職場のトラブル全般 |
| 労働基準監督署 | 最低賃金や残業代など、法律に反しているおそれがあるとき |
| フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業) | 業務委託の報酬や契約のトラブル |
相談するときは、契約書、給料や報酬の明細、働いた時間のメモを持っていくと話が早く進みます。法律の判断が必要なことは、この記事では答えられません。
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「完全歩合」の求人で見ること
- 雇用形態は正社員などか、業務委託か
- 雇われるなら、保障給と最低賃金があるか
- 業務委託なら、経費と保険料を自分で払うか
- 最初の数か月の収入の支えがあるか
- 研修費・違約金の決まりがないか
完全歩合は、経験と顧客がある人には向く働き方です。未経験の20代は、まず固定給がある仕事で力をつけてから選ぶほうが、生活が安定します。「月収100万円」という言葉だけで決めず、契約の形と収入の下限を確かめてから応募しましょう。
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正社員で完全歩合の会社はありますか?
雇われて働く人には、労働基準法で保障給が、最低賃金法で最低賃金が決められているため、成果がゼロなら給料もゼロ、という完全歩合にはできません。
完全歩合と歩合制の違いは何ですか?
歩合制は基本給に成果の分を上乗せする形が多く、完全歩合は基本給がなく成果の分だけが収入になる形です。
業務委託の完全歩合には最低賃金がありますか?
ありません。業務委託は労働基準法や最低賃金法が当てはまらないため、売れなければ収入が0円になることもあります。
歩合で払われる人にも残業代は出ますか?
雇われて働く人なら出ます。歩合給をその月に働いた時間で割り、0.25をかけて残業時間分を出すのが基本です。
保障給はいくらですか?
法律で額は決まっていません。国の通達は、ふだんの収入と大きく離れない程度を保障するよう求めています。最低賃金を下回ることはできません。
業務委託なのに出社時間を決められています。
働く時間や場所を細かく決められ、指示どおりに動いている場合は、法律で労働者と判断されることがあります。総合労働相談コーナーに相談できます。
完全歩合で未経験から稼げますか?
稼げる人もいますが、仕事を覚えるまでの数か月は収入が少なくなりやすいです。生活費の余裕と、研修の有無を確かめてから決めましょう。
研修費の返金を求められました。
辞めたときの違約金や損害賠償の額をあらかじめ決めることは、雇われて働く人の場合、労働基準法で禁じられています。くわしくは公的な窓口に相談してください。
どこに相談すればいいですか?
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