入社前の健康診断で何を見られる? 費用・結果の扱いと見送る線
内定の連絡と一緒に「入社日までに健康診断の結果を提出してください」と案内が届く。持病があると不利になるのか、費用は自分で払うのか、結果は誰が見るのか。初めて正社員になる人ほど不安になる場面です。入社前の健康診断には、法律で会社に義務づけられたものと、国が注意を呼びかけている選考のための健診があり、扱いがちがいます。決まりと国の考え方を整理し、案内の読み方、面接や内定のあとの聞き方、「この条件なら見送る」線を示します。
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「入社前の健康診断」とは
入社前の健康診断は、入社が決まった人に、会社が受けるよう求める健康診断のことです。法律の言葉では「雇入れ時の健康診断」と呼びます。
ただ、同じ「健康診断」でも、受ける時期と目的で2つに分かれます。ここを分けて考えるのが、この記事のいちばんの土台です。
似た言葉のちがい
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 雇入れ時の健康診断 | 会社が人を雇うときに行う健診。法律で項目が決まっている |
| 採用選考時の健康診断 | 合否を決める前の健診。国は必要性を慎重に考えるよう求めている |
| 定期健康診断 | 入社後、年に1回行う健診 |
| 健康診断書(診断書) | 病院が出す、健診の結果を書いた書面 |
責任者
法律の決まり:雇入れ時に調べる11項目
会社は、常に使う働き手を雇い入れるとき、医師による健康診断を行わなければならないと決まっています。働く人の側にも、受ける義務があります。
| 調べること | 中身 |
|---|---|
| 1. これまでの病気と仕事 | 既往歴・業務歴の聞き取り |
| 2. 自覚症状と他覚症状 | 本人の訴えと医師の診察 |
| 3. 体の測定 | 身長・体重・腹囲・視力・聴力 |
| 4. 胸部エックス線 | 肺や心臓の写真 |
| 5. 血圧 | 血圧の測定 |
| 6〜9. 血液検査 | 貧血・肝機能・血中脂質・血糖 |
| 10. 尿検査 | 尿の中の糖とたんぱく |
| 11. 心電図 | 心臓の動きの検査 |
雇入れ時の健診は、定期健診とちがい、医師の判断で項目を省くことはできません。かつてあった色覚の検査は、2001年10月に項目から外されました。
出典:労働安全衛生法第66条、労働安全衛生規則第43条(e-Gov法令検索)、山梨労働局「定期健康診断について」、大阪労働局「採用選考時の健康診断について」。
3か月以内の診断書で代えられる・対象になる人
入社前の3か月以内に医師の健診を受けていて、その結果の書面を会社に出せば、同じ項目は受け直さなくてよいと決まっています。前の職場や大学の健診が使えることがあります。
パート・契約社員も対象になるか
| 次の両方に当てはまる人 | 内容 |
|---|---|
| 働く期間 | 期間の定めがない、または更新などで1年以上働く見込みがある |
| 働く時間 | 1週間の所定労働時間が、同じ仕事の正社員の4分の3以上 |
また、会社が指定した病院で受けたくないときは、ほかの医師で同じ健診を受けて結果を出すこともできます。
受ける前に用意すること
手元に前の健診の結果があれば、受けた日と項目を先に確かめます。心電図や血液検査が抜けていることがあるので、会社の案内の項目と1つずつ見比べます。
結果が届くまで日数がかかる病院もあります。受ける前に届く日を聞き、入社日から逆算して早めに予約します。
出典:労働安全衛生規則第43条、労働安全衛生法第66条第5項(e-Gov法令検索)、山梨労働局「定期健康診断について」。
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選考のための健康診断に、国は注意を呼びかけている
国は、採用選考のときに気をつけることの1つに、「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」を挙げています。仕事をする力と関係のない情報で合否を決めると、就職差別につながるおそれがあるからです。
| 検査 | 国の考え方 |
|---|---|
| 雇入れ時の健診を、選考の段階で一律に行う | 雇入れ時の健診は配置と入社後の健康管理のためのもの。選考時に行う義務はなく、合否を決めるためのものでもない |
| HIVの検査 | 一般に能力や適性と関係がないため、選考を目的に行わないよう求めている |
| 肝炎ウイルスなどの血液検査 | 差別につながるおそれがあり、仕事との関係で必要かを慎重に考え、必要なら事前に十分説明する |
| 色覚の検査 | 大半の人は仕事に支障がない。仕事との関係で必要かを慎重に考える |
つまり、内定の前に「健診の結果を出して」と求められたら、理由を聞いてよい場面です。
出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本(採用選考時に配慮すべき事項)」、大阪労働局「採用選考時の健康診断について」。
費用は誰が払うか
法律で会社に行う義務がある健康診断の費用は、会社が負担すべきものと国は説明しています。雇入れ時の健診も、この中に入ります。
| 案内の書き方 | 読み方 |
|---|---|
| 「指定の病院で受診。費用は会社が支払います」 | 法律の考え方どおり |
| 「近くの病院で受け、領収書を入社日に提出」 | 立て替えのあとに精算する形。上限の額と、いつ戻るかを聞く |
| 「費用は自己負担でお願いします」 | 11項目のぶんまで本人負担なら、理由を確かめたい書き方 |
受診にかかった時間の給料や、再検査の費用は、法律で一律には決まっていません。会社のきまりを聞いておきます。
出典:厚生労働省「健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?」(労働基準行政についてのよくある質問)。
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求人を紹介してもらう結果は誰が見て、何に使うのか
健診の結果は、病院から本人と会社に届きます。会社は結果を本人に知らせ、記録を5年間保存することになっています。
健康の情報は「必要な範囲」で扱う
会社は、働く人の心身の状態の情報を、健康を守るために必要な範囲で集め、その目的の範囲で使うと法律で決まっています。応募した段階の人の個人情報も、目的に必要な範囲で集めることになっています。
自分でも写しを残す
届いた結果は、自分でも写しを保存しておきます。入社後に「再検査を」と言われたときや、次の転職で3か月以内の結果を使うときに役立ちます。
出典:労働安全衛生法第66条の4・第66条の6・第104条、労働安全衛生規則第51条、職業安定法第5条の5(e-Gov法令検索)。
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適職診断をする(無料)結果を理由にした内定取り消し
「数値が悪かったら内定が消えるのでは」と心配する人は多いです。内定は法律の上で契約と考えられ、会社が取り消せる場面は限られています。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 取り消せる場合 | 内定のときに知ることができなかった事実があり、取り消すことが客観的に合理的で、社会の常識から見て相当な場合に限られる |
| 健診の結果との関係 | 結果だけで一律に決まるものではない。仕事ができないほどの事情か、配慮で働けるかなどが問われる |
| 雇入れ時の健診の目的 | 配置と健康管理のためのもので、採否を決めるためのものではない |
取り消しが争われた例は、「内定取り消し」の裁判例の記事で取り上げています。法律の判断が必要なときは、公的な窓口に相談します。
出典:最高裁判所 第二小法廷 昭和54年7月20日判決(裁判所「裁判例検索」)、大阪労働局「採用選考時の健康診断について」。
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健診そのものは、法律で決まった手続きです。気をつけたいのは、健診を選考の道具にしたり、手続きをあいまいにしたりする会社です。
| 入ってから聞く声 | 起きていたこと |
|---|---|
| 最終面接の前に、血液検査の結果を出すよう言われた | 合否の前に、仕事と関係の薄い情報を集めていた |
| 健診の費用が、最初の給料から引かれていた | 会社が負担すべき費用を、本人に回していた |
| 持病のことが、同じ部署の人に知られていた | 健康の情報を扱う人の範囲が決まっていなかった |
| 結果を出したら、入社日を何度も延ばされた | 取り消しの理由を言わないまま、返事を引き延ばしていた |
反対に、健診の目的・費用・結果の扱いを先に説明する会社なら、心配しすぎることはありません。
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求人を紹介してもらう求人票・案内の実例を読む
健康診断の案内のよくある書き方を、3つの型で読みます(実在の会社の文面ではなく、よくある書き方の例です)。
| 案内の書き方 | 読み方 | 確かめること |
|---|---|---|
| 「内定後、入社前に指定の病院で健康診断を受けてください。費用は当社負担です」 | 内定のあとの雇入れ時の健診。費用も示されている | 結果を見るのは誰か |
| 「応募書類に、3か月以内の健康診断書を添えてください」 | 合否の前に健康の情報を集める形 | なぜ選考に必要なのか。仕事との関係の説明があるか |
| 「入社手続きの書類:健康診断書(自費)・身元保証書」 | 時期は内定のあとでも、費用が本人負担 | 11項目の費用を会社が払えるか、精算はあるか |
求人票の福利厚生の欄に「健康診断」とあれば、ふつうは入社後の定期健診のことです。入社の書類は「労働条件通知書」の記事もあわせて読んでください。
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適職診断をする(無料)こう書いてあったら見送る
次のどれかに当てはまるなら、ほかの会社と比べてから決めることをおすすめします。
健診について聞きにくいことは、担当のエージェントが会社に確かめます
- 健診は内定の前か、あとか。選考に使うか
- 費用は会社が払うか、立て替えの精算はあるか
- 結果を見る人の範囲と、保管のしかた
責任者
面接・内定のあとの聞き方
健診のことは、内定の連絡のあとに、手続きの質問として聞くと角が立ちません。面接の場で持病を自分から細かく話す必要はありません。
| 聞くこと | 聞き方の例 |
|---|---|
| 時期 | 「健康診断は、入社前のいつまでに受ければよいですか」 |
| 代わりの書面 | 「3か月以内に受けた健診の結果があるのですが、使えますか」 |
| 費用 | 「費用は御社でご負担いただけますか。立て替える場合の精算の方法も教えてください」 |
| 結果の扱い | 「結果はどなたが確認され、どのように保管されますか」 |
| 選考の前に求められたとき | 「選考の段階で必要な理由を教えていただけますか」 |
伝えるのは、仕事に関わる配慮だけで十分です。内定の返事の期限は「内定承諾の期限」の記事をどうぞ。
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選考の前に健診を求められた、費用を払わされた、結果を理由に取り消されたといったときは、公的な窓口に無料で相談できます。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署の中) | 内定取り消しなど働く条件のトラブル全般 |
| 労働基準監督署 | 健診の費用や実施など、法律に反する疑いがあるとき |
| 都道府県労働局・ハローワーク | 選考のときの健診など、公正な採用選考についての相談 |
入社前の健康診断で見ること
- 健診は内定の前か、あとか
- 3か月以内の結果で代えられるか
- 費用は会社が払うか、精算はあるか
- 結果を見る人の範囲と保管のしかた
- 結果のあとに、入社の返事を引き延ばされないか
健診があること自体は、法律に沿った手続きです。目的・費用・結果の扱いを先に説明してくれるかで、会社の姿勢が見えます。法律の判断が必要なことは、この記事では答えられません。
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入社前の健康診断は、受けなければいけませんか?
法律で、会社には雇い入れるときに健康診断を行う義務があり、働く人にも受ける義務があります。会社が指定した病院以外で受けて、結果を出すこともできます。
どんな項目を調べますか?
これまでの病気の聞き取り、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線、血圧、貧血・肝機能・血中脂質・血糖の血液検査、尿検査、心電図など11項目です。
前の職場の健康診断の結果は使えますか?
受けてから3か月以内で、結果の書面を出せば、同じ項目は受け直さなくてよいと決まっています。足りない項目は会社に確かめましょう。
費用は自分で払うのですか?
法律で会社に義務がある健康診断の費用は、会社が負担すべきものと国は説明しています。立て替えたときは、精算の方法を確かめましょう。
健康診断の結果が悪いと、内定は取り消されますか?
結果だけで一律に決まるものではありません。内定の取り消しは、客観的に合理的で、社会の常識から見て相当な場合に限られます。困ったら総合労働相談コーナーに相談しましょう。
選考の段階で健康診断書を出すよう言われました。
国は、必要性が認められない採用選考時の健康診断に注意を呼びかけています。なぜ選考に必要なのか、理由を聞いてかまいません。
持病は面接で伝えるべきですか?
仕事に関わる配慮(通院の休みなど)が必要なら、その点だけ伝えれば十分なことが多いです。病名まで細かく話すかは、自分で決めてかまいません。
健診の結果は、会社の誰が見るのですか?
会社は健康の情報を、健康を守るために必要な範囲で扱うと法律で決まっています。誰が確認し、どう保管するかは会社に聞きましょう。
パートやアルバイトでも受けますか?
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