「労働条件通知書」をくれない会社はやめとけ? 読み方と見送る線
内定の連絡のあと、「労働条件通知書」という書面が届きます。給料や休みの数字が並んでいて、なんとなく目を通して終わりにしてしまう人も少なくありません。反対に、「入社してから渡します」と言われて、書面をもらえないまま入社日を迎えることもあります。労働条件通知書は、入社のときの約束を書面で残す、法律で決まった書類です。ここでは、法律の決まりと全国の相談のデータを整理し、項目ごとの読み方と、内定のあとに確かめることと「この条件なら見送る」線を示します。
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「労働条件通知書」とは
労働条件通知書は、会社が働く人に給料・働く時間・休み・仕事の内容などの条件を書面で示すための書類です。法律で、雇うときに示すことが決まっています。
似た書類に「雇用契約書」があります。こちらは会社と働く人の両方が署名する契約の書面で、法律で作ることが決まっているわけではありません。1枚で両方をかねた「労働条件通知書 兼 雇用契約書」もよく使われます。
書類のちがい
| 書類 | どんなものか |
|---|---|
| 労働条件通知書 | 会社から働く人へ、条件を書面で示す。法律で必要 |
| 雇用契約書 | 会社と働く人が合意したことを書き、両方が署名する |
| 内定通知書 | 採用を決めたことを知らせる。条件がくわしく書かれていないことも多い |
| 就業規則 | 会社全体の働き方の決まり。10人以上の職場では作る決まりがある |
責任者
法律の決まり:書面で示す項目が決まっている
会社は、雇うときに働く条件を示さなければならず、そのうち大事な項目は書面で渡すことになっています。働く人が望めば、メールなど印刷できる形でもかまいません。
| 書面で示す項目(主なもの) | 中身 |
|---|---|
| 契約の期間 | 期間の定めがあるか。ある場合は更新の基準と、更新の上限 |
| 働く場所と仕事の内容 | 入社のときの内容と、将来変わりうる範囲(2024年4月から) |
| 働く時間と休み | 始業・終業の時刻、決まった時間をこえる労働の有無、休憩、休日、休暇 |
| 給料 | 決め方、計算と支払いの方法、締め日と支払日 |
| 辞めるとき | 退職と解雇の決まり |
| ほかの決まり | 内容 |
|---|---|
| ちがっていたとき(労働基準法第15条第2項) | 示された条件が事実とちがえば、働く人はすぐに契約を解除できる |
| 帰る旅費(第15条第3項) | 働くために住まいを移した人が、解除から14日以内に帰るときは、会社が旅費を出す |
| 示さなかったとき | 30万円以下の罰金の対象になる |
| 募集のときとちがう条件にするとき(職業安定法第5条の3) | 会社は、募集のときに示した条件を変えるなら、変える中身を示す |
出典:労働基準法第15条・第120条、労働基準法施行規則第5条、職業安定法第5条の3、厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」・「2024年4月からの労働条件明示のルール変更」。
全国のデータ:働く条件の相談は年に約120万件
労働局や労働基準監督署の窓口には、働く条件についての相談が1年で119万8,010件寄せられています。100万件をこえるのは18年続いています。
| 令和7年度の主な数字 | 件数 |
|---|---|
| 相談の内容で最も多い「いじめ・嫌がらせ」 | 55,614件(14年続けて最多) |
| 労働局長の助言・指導を求めた内容で最も多い「労働条件の引き下げ」 | 1,220件 |
| あっせん(話し合いの手助け)を求めた内容で最も多い「解雇」 | 892件 |
入社したあとに条件が下げられた、と相談する人は少なくありません。入社のときの条件を書面で持っていることが、こうしたときの出発点になります。
出典:厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2026年7月公表)、「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」。
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読み方:項目ごとに見るところ
労働条件通知書は、求人票と1行ずつ見比べるのが基本です。とくに次の項目は、数字や言葉が少しちがうだけで中身が大きく変わります。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 契約の期間 | 「期間の定めなし」か。試用期間の長さと、その間の条件 |
| 働く場所(変更の範囲) | 「会社の定める場所」なら転勤がありうる |
| 仕事の内容(変更の範囲) | 「会社の定める業務」なら別の仕事に移ることがありうる |
| 働く時間 | 始業・終業の時刻、残業の有無、変形労働時間制などの制度 |
| 休日 | 年間休日の日数、週休2日制か完全週休2日制か |
| 給料 | 基本給の額、手当の内訳、固定残業代の時間と金額 |
| 辞めるとき | 何日前に伝えるか、解雇の理由 |
読むときのコツ
- 求人票と同じ項目に、蛍光ペンで線を引いて比べる
- 「別途定める」「就業規則による」と書かれた項目は、就業規則を見せてもらう
- わからない言葉は、入社の前に聞いておく
勤務地の「変更の範囲」の読み方は、「転勤あり」の記事でくわしく取り上げています。
なぜ「やめとけ」と言われるのか
労働条件通知書を出さない、出し渋る、中身があいまいな会社は、入社のあとに条件のずれが起きやすい会社です。
| 入ってから聞く声 | 起きていること |
|---|---|
| 書面をもらえないまま入社した | 約束の中身を証明するものがない |
| 求人票より基本給が低かった | 固定残業代や手当で、総額を合わせていた |
| 試用期間の給料が下がると、入社してから知った | 試用期間の条件が書かれていなかった |
| 正社員のつもりが、1年ごとの契約だった | 契約の期間を読んでいなかった |
| 入社してすぐ、遠くの店に移された | 働く場所の変更の範囲が広かった |
試用期間の条件は、「試用期間」の記事も参考にしてください。
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求人を紹介してもらう労働条件通知書の実例を読む
よくある書き方を、3つの型に分けて読みます(実在の会社の書面ではなく、よくある書き方の例です)。
| 書き方 | 読み方 | 確かめること |
|---|---|---|
| 賃金:月給25万円(詳細は就業規則による) | 基本給と手当の内訳がわからない | 基本給の額、固定残業代の有無 |
| 契約期間:期間の定めあり(2027年4月1日〜2028年3月31日)、更新:会社が必要と認めた場合 | 1年ごとの契約。更新の基準があいまい | 更新の基準と上限、正社員になる道 |
| 就業場所:東京本社(変更の範囲:会社の定める場所)、業務:営業(変更の範囲:会社の定める業務) | 勤務地も仕事も、将来広く変わりうる | この数年の転勤と異動の実績 |
1つ目のように、給料の内訳が書かれていない書き方は、求人票の金額とくらべにくい形です。基本給の読み方は「基本給が低い」の記事もどうぞ。
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いつ、どの形でもらえるか
内定を受けると決める前に、書面をもらえるかを確かめます。入社日にしか渡さない会社もありますが、返事をする前に見せてもらうのが安心です。
求人票とちがうところ
ちがう項目があれば、なぜ変わったのかを聞きます。会社は、変える中身を示すことになっています。
「就業規則による」の中身
就業規則を見せてもらい、関係するところを読みます。
わからない言葉
変形労働時間制、みなし労働時間制など、わからない言葉は聞いておきます。
聞きにくい条件の確認は、担当のエージェントが会社に確かめます
- 労働条件通知書をもらえる時期
- 求人票と条件がちがう理由
- 試用期間中の給料や働き方
入社したあとにやること
労働条件通知書は、入社したあとも大切に保存しておく書類です。条件のずれに気づいたときの、いちばんの手がかりになります。
条件が変わると言われたら
給料や働く時間などの条件を、会社が一方的に下げることは、原則としてできません。条件を変える話が出たら、何がどう変わるのかを書面でもらってから返事をしましょう。
| 確かめること | どこで見るか |
|---|---|
| 給料の額と内訳 | 労働条件通知書、給与明細 |
| 働く時間と休み | 労働条件通知書、就業規則、会社カレンダー |
| 契約の更新 | 労働条件通知書、更新のときの書面 |
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求人を紹介してもらう困ったときの相談先
書面をもらえない、書面と実際の条件がちがう、条件を一方的に下げられた、といったときは、公的な窓口に無料で相談できます。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署の中) | 働く条件のトラブル全般。会社との話し合いの手助け(あっせん)も |
| 労働基準監督署 | 労働条件を書面で示さない、給料が払われないなど |
| ハローワーク | ハローワークの求人の内容と、実際の条件がちがうとき |
| 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省の委託事業) | 夜や土日も電話で相談できる |
相談には、求人票の写し、労働条件通知書、給与明細を持っていくと話が早く進みます。法律の判断が必要なことは、この記事では答えられません。
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労働条件通知書で見ること
- 内定の返事の前に、書面で受け取れるか
- 求人票と同じ条件か、ちがう項目に説明があるか
- 基本給と手当、固定残業代の内訳
- 契約の期間と試用期間の条件
- 働く場所と仕事の「変更の範囲」
労働条件通知書をすぐに出してくれて、質問にもていねいに答えてくれる会社は、約束を大切にする会社であることが多いものです。書面は、入社のあとも自分を守る材料になります。内定のあとの流れは「内定取り消し」の記事でも取り上げています。
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労働条件通知書は、必ずもらえるものですか?
会社は、雇うときに働く条件を示すことが法律で決まっていて、大事な項目は書面で渡すことになっています。もらえない場合は、会社に求めましょう。
雇用契約書と労働条件通知書は何がちがいますか?
労働条件通知書は、会社が条件を示すための書類で、法律で必要です。雇用契約書は、会社と働く人の両方が署名して合意を残す書類です。1枚で両方をかねる形もあります。
いつもらえますか?
雇うとき(契約を結ぶとき)に示すことになっています。内定の返事をする前に見せてもらえるか、確かめておくと安心です。
メールでもらってもいいですか?
働く人が望めば、メールなど印刷できる形で受け取ることができます。受け取ったら、印刷するかPDFで保存しておきましょう。
求人票と条件がちがいました。
会社は、募集のときに示した条件を変えるなら、変える中身を示すことになっています。なぜ変わったのかを聞き、納得できなければ返事を見送ることも考えましょう。
入社してから、書面とちがう条件だとわかりました。
示された条件が事実とちがう場合、働く人はすぐに契約を解除できると法律で決まっています。まずは会社に確かめ、解決しないときは労働基準監督署などに相談しましょう。
「変更の範囲」とは何ですか?
2024年4月から、働く場所と仕事の内容について、将来変わりうる範囲を示すことになりました。「会社の定める場所」なら、転勤がありうると読めます。
署名を急がされたら、どうすればいいですか?
持ち帰って読む時間をもらいましょう。わからない項目は、署名の前に聞いておくことが大切です。
労働条件通知書は、いつまで取っておけばいいですか?
辞めたあとも、しばらくは保存しておくのがおすすめです。給料や退職についてのトラブルが起きたときの材料になります。
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