【裁判例】歩合給と残業代の関係が争われたケース|「歩合だから残業代はない」が通らない理由と、次の転職で防ぐ方法
売上に応じて給料が決まる歩合給の仕事。がんばった分だけ増えると思って入ったのに、遅くまで働いた月も、早く帰った月も、手元に残る額があまり変わらない。明細には「残業手当」と書いてあるのに、そのぶん歩合給が減っている。ドライバーや営業の仕事で起きやすいしくじりです。裁判所は、名前だけ残業代にして、実際には歩合給を置きかえただけのしくみを、残業代の支払いとは認めていません。最高裁判所の判決をもとに、歩合給と残業代の関係を整理し、次の転職で同じことを防ぐ方法と、内定を勝ち取るための準備をまとめました。
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よくある流れ:働く時間が増えても、給料が増えない
歩合給と残業代のしくじりは、次のような流れで起きることが多くあります(公的な判決や相談の例をもとにした、よくある流れです)。
とくに20代で未経験から入ると、「歩合の仕事は残業代がないもの」と思いこんでしまうことがあります。歩合給でも、雇われて働く人には残業代の決まりがあります。
固定の手当を残業代とする形が争われた例は、「固定残業代が無効とされた」裁判例で取り上げています。
責任者
裁判所の判断1:残業代を差し引く歩合給
タクシーの乗務員の人たちが、歩合給の計算のしかたが残業代の決まりに反するとして、払われていない賃金を求めた事件です。最高裁判所で2度争われました。
| 争点 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| どんなしくみだったか | 売上をもとに出した額から、残業・深夜・休日の手当(割増金)と交通費を差し引いて歩合給を計算していた。長く働くほど差し引く額が増え、歩合給が0円になる月もあった |
| 1度目の判断(2017年) | このような定めが、それだけで直ちに無効とはいえないとした。ただ、ふつうの賃金と残業代の部分を分けられるかを調べていないとして、審理をやり直させた |
| 2度目の判断(2020年) | 割増金は、本来は歩合給として払われるはずの賃金の一部を、名前だけ残業代に置きかえたものといえる。どこまでが残業の対価なのかがはっきりしない |
| 結論 | 割増金を払っても、法律の残業代を払ったことにはならない。差し引いた割増金はふつうの賃金として扱い、法律の方法で残業代を計算し直すべきとした |
つまり、明細に「残業手当」と書いてあっても、その分だけ歩合給が減るしくみなら、残業代を払ったとはいえないということです。
出典:最高裁判所 令和2年3月30日 第一小法廷判決(平成30年(受)第908号)、平成29年2月28日 第三小法廷判決(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」、厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例)。
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求人を紹介してもらう裁判所の判断2:給料のしくみを変えても、中身で見る
歩合のある給料と残業代の関係は、ほかの事件でも争われています。どの事件でも、裁判所は手当の名前ではなく中身を見ています。
| 事件 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| トラックの運転手。労働基準監督署の指導を受けて給料のしくみを変え、「時間外手当」と新しい「調整手当」を合わせて残業代とした(最高裁判所 令和5年3月10日) | 給料の総額も働く時間も前とほとんど変わらず、基本の歩合給が大きく減っていた。新しいしくみは、前はふつうの賃金だった部分を、名前だけ残業代に置きかえたものとした。残業代を払ったとは認めず、審理をやり直させた |
| タクシーの乗務員。給料は売上に応じた歩合給だけで、残業や深夜に働いても増えないしくみだった(最高裁判所 平成6年6月13日) | 歩合給の中で、ふつうの賃金と残業代の部分を分けることができない。歩合給を払っても残業代を払ったことにはならず、法律どおりに計算した残業代を払う義務があるとした |
出典:最高裁判所 令和5年3月10日 第二小法廷判決、平成6年6月13日 第二小法廷判決(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」、厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例)。
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国の決まり:歩合給の残業代は、こう計算する
歩合給でも、雇われて働く人には残業代・最低賃金・保障給の決まりがあります。歩合給の残業代は、歩合給の総額を、残業を含めた全部の働いた時間で割って1時間あたりの額を出し、割増の分(0.25)をかけて計算します。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 歩合給の残業代(労働基準法施行規則第19条) | 歩合給の総額÷全部の働いた時間×0.25×残業の時間。1.0の分は歩合給にふくまれているため、割増の分だけを払う |
| 固定給と歩合給があるとき | 固定給の分と歩合給の分を、それぞれ計算して足す |
| 保障給(労働基準法第27条) | 歩合給の人には、働いた時間に応じて一定の額を保障する |
| 最低賃金(最低賃金法第4条) | 歩合給を時間で割った額が、最低賃金を下回ってはいけない |
| 払われていない賃金を求められる期間 | 法律では5年。ただし当分の間は3年 |
歩合給の残業代は、時給や月給の人よりも少なめに出るしくみです。だからこそ、この少ない残業代すら、歩合給を減らすことで帳消しにしていないかを見ることが大切です。
出典:労働基準法第27条・第37条・第115条・附則第143条、労働基準法施行規則第19条、最低賃金法第4条、厚生労働省「歩合給制とはどのような制度ですか?」(スタートアップ労働条件)。
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歩合給の仕事で、長く働いても給料が変わらないと感じたら、まず3か月分ほどの明細と働いた時間を並べてみましょう。
そろえておくもの
- 給与明細(歩合給・残業手当・その他の手当が分かるもの)
- 賃金の規程や、歩合給の計算のしかたが書かれた書面
- 毎日の出社・退社の時刻のメモ、運転日報や業務日誌の控え
- 労働条件通知書、求人票の写し
| 明細で見るところ | 注意したい形 |
|---|---|
| 残業手当と歩合給の関係 | 残業手当が増えた月に、同じだけ歩合給が減っている |
| 総額と働いた時間 | 働いた時間が大きくちがうのに、総額がほぼ同じ |
| 1時間あたりの額 | 総額を働いた時間で割ると、最低賃金に届かない |
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署の中) | 給料のしくみや残業代のトラブルを無料で相談。会社との話し合いの手助け(あっせん)も |
| 労働基準監督署 | 残業代や最低賃金が払われていないおそれがあるとき |
| 法テラス | 弁護士への相談の窓口の案内 |
この記事は判決や決まりの考え方を紹介するもので、個別のケースの判断はできません。
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求人を紹介してもらう次の転職で内定を勝ち取るために
同じ失敗をくり返さないためには、入る前に給料のしくみを数字で確かめることと、歩合の仕事で身につけた力を前向きに伝える準備の両方が大切です。
入る前に確かめること
| 確かめること | 安心できる答え | 注意したい答え |
|---|---|---|
| 給料の内訳 | 固定給・歩合給・残業代が分けて説明される | 「全部こみで、売上しだい」 |
| 残業したときの給料 | 残業が増えると、総額も増える | 「歩合だから残業代は関係ない」 |
| 入社1年目の人の給料 | 平均と、少ない月の額を答えてもらえる | 「トップの人は月50万円」とだけ言われる |
歩合の仕組みの見分け方は、「歩合制」の記事や「完全歩合」の記事も参考になります。
職務経歴書の書き方(ビフォー・アフター)
| 書き方 | |
|---|---|
| ビフォー | 歩合制で残業代が出ず、給料が安定しなかったため退職。 |
| アフター | 配送ドライバーとして1年半、1日約100件の配達を担当。担当地域の道順を自分で見直し、1日の配達完了の時刻を約30分早めました。お客さまの不在が多い時間帯を記録し、再配達を減らす工夫も続けました。 |
職務経歴書には、給料への不満ではなく、自分がやった工夫と数字を書きます。歩合の仕事で身につけた「数字を追う力」は、営業や事務の仕事でも評価されます。
面接での答え方(退職の理由)
前の会社を責めるのではなく、自分がしてきた工夫と、次にしたいことにつなげると、前向きに伝わります。
出す前・話す前のチェックリスト
- 面接で、固定給・歩合給・残業代の内訳を聞いた
- 残業が増えたときに総額が増えるかを確かめた
- 労働条件通知書で、賃金の計算のしかたを読んだ
- 職務経歴書に、前の仕事の工夫を数字で書いた
- 退職の理由を、前の会社を責めずに1分ほどで話せる
まとめ:歩合給でも、残業代は「中身」で見られる
歩合給の仕事でも、雇われて働く人には残業代の決まりがあります。最高裁判所の判決は、残業代という名前をつけても、その分だけ歩合給が減るしくみや、ふつうの賃金を名前だけ置きかえたしくみは、残業代の支払いとは認めないと示しています。
この記事のポイント
- 歩合給でも、雇われて働く人には残業代・最低賃金・保障給の決まりがある
- 残業代の分だけ歩合給を差し引くしくみは、残業代の支払いと認められなかった
- 給料のしくみを変えても、名前だけの置きかえなら認められない
- 明細では、残業が増えたときに総額が増えているかを見る
- 次の転職では、入る前に給料の内訳を数字で確かめる
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歩合給の仕事でも、残業代は出ますか?
雇われて働く人なら、歩合給でも残業代の決まりがあります。歩合給の総額を全部の働いた時間で割り、0.25をかけて残業の時間分を計算するのが基本です。
歩合給の残業代は、なぜ0.25倍なのですか?
歩合給は残業の時間も含めた働きの成果として払われているため、1.0の分はすでに払われていると考え、割増の分だけを払うしくみになっています。
明細に残業手当があるのに、総額が変わりません。
残業手当の分だけ歩合給が減っている可能性があります。最高裁判所は、そのようなしくみで払われた手当を、残業代の支払いとは認めませんでした。明細を数か月分並べて見てみましょう。
給料のしくみが途中で変わりました。
しくみを変えても、ふつうの賃金を名前だけ残業代に置きかえたものなら、残業代の支払いとは認められなかった判決があります。変わる前と後の明細を保存しておきましょう。
歩合給でも最低賃金は守られますか?
守られます。歩合給を働いた時間で割った額が、最低賃金を下回ってはいけません。また、働いた時間に応じた保障給を決める必要があります。
業務委託の歩合でも、同じ決まりがありますか?
業務委託は雇用ではないため、原則として残業代の決まりはありません。ただし、実態が雇われている人と同じなら、労働者として扱われることがあります。
払われていない残業代は、何年前の分まで求められますか?
法律では5年とされていますが、当分の間は3年です。早めに明細と記録をそろえて相談しましょう。
どこに相談すればいいですか?
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