【裁判例】固定残業代が「無効」とされたケース|払われていなかった残業代と、次の転職で防ぐ方法
「うちは残業代が給料に込みだから」と言われて、毎月長く働いていたのに、あとから裁判所が「残業代は払われていなかった」と判断したケースがあります。固定残業代(みなし残業代)は、決まりを守れば法律で認められるしくみです。ただ、書き方や中身によっては無効になります。この記事では、最高裁判所の判決をもとに、無効とされた理由と有効とされた理由の分かれ目を整理し、次の転職で同じ失敗をしないための見分け方と、内定を勝ち取るための準備をまとめました。
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よくある流れ:「込み」のはずが、払われていなかった
固定残業代をめぐる失敗は、次のような流れで起きることが多くあります(公的な判決をもとにした、よくある流れです)。
大切なのは、固定残業代がそれだけで違法なわけではないことです。決まりを守った形なら認められます。問題になるのは、どこまでが残業代なのかわからない形です。
責任者
裁判所の判断1:歩合給に「残業代も入っている」とされた事件
タクシーの運転手の給料が、売上に応じた歩合給だけで払われていた事件です。会社は「歩合給の中に、時間外や深夜の割増賃金も入っている」と主張しました。
| 争点 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| 歩合給に残業代が入っているか | 通常の給料の部分と、割増賃金にあたる部分を区別できない |
| 残業代は払われたか | 区別できない以上、割増賃金が払われたとはいえない |
| 結果 | 会社は、時間外・深夜の割増賃金を別に払う必要がある |
「込み」と言うだけでは足りず、どの部分が残業代なのか区別できることが必要だと示した判決です。
出典:最高裁判所 平成6年6月13日 第二小法廷判決(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」)。
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求人を紹介してもらう裁判所の判断2:月給の中の残業代がわからなかった事件
派遣で働く人の雇い方で、「1か月の働く時間が180時間をこえたら、その分だけ残業代を払う」という決まりだった事件です。
| 争点 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| 180時間までの残業代は月給に入っているか | 月給のどこが残業代にあたるのか、区別できない |
| 残業代は払われたか | 法律で決まった時間をこえた分(180時間未満も含む)の割増賃金が払われたとはいえない |
| 結果 | 残業代の支払いについて、審理をやり直すよう命じた |
補足の意見では、固定残業代を払うなら、何時間分で、いくらなのかを雇うときにはっきりさせるべきだと述べられています。
出典:最高裁判所 平成24年3月8日 第一小法廷判決(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」)。
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有効とされた例と、無効とされた例の分かれ目
反対に、固定残業代が有効とされた最高裁の判決もあります。薬剤師の雇い方で、契約書と給料の決まりに「この手当は時間外の働きへの対価」と書かれ、実際の残業とも大きくずれていなかった事件です。一方、売上に応じた給料から残業代の分を差し引くしくみは、残業代が払われたとはいえないとされました。
| 有効とされやすい | 無効とされやすい | |
|---|---|---|
| 区別 | 通常の給料と残業代の部分がはっきり分かれている | どこが残業代かわからない |
| 書き方 | 契約書・給料の決まりに「時間外の対価」と書いてある | 「込み」と口で言われただけ |
| 実際 | 実際の残業と、手当の時間が大きくずれていない | 手当の時間をこえても、差額が払われない |
| しくみ | 残業をしても給料の総額が減らない | 残業代の分を、ほかの給料から差し引いている |
この記事は、判決の考え方を紹介するもので、個別のケースの判断はできません。自分のケースは、相談先に聞いてください。
出典:最高裁判所 平成30年7月19日 第一小法廷判決、令和2年3月30日 第一小法廷判決(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」)。
いま同じ状況なら:確かめることと相談先
「込みと言われているけれど、残業が多すぎる」と感じたら、まず次のものをそろえましょう。
そろえておくもの
- 雇うときにもらった書面(労働条件通知書・雇用契約書)
- 給料の明細(固定残業代が何時間分・いくらと書いてあるか)
- 働いた時間の記録(勤怠の記録、自分のメモ、パソコンの記録など)
- 就業規則・給料の決まり(賃金規程)
残業代を請求できるのは、給料日から3年までです(2020年4月より前の分は2年)。気づいたら早めに動くことが大切です。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署の中) | 残業代や職場のトラブル全般を無料で相談 |
| 労働基準監督署 | 法律に反しているおそれがあるときの申告 |
| 法テラス | 弁護士への相談の窓口の案内 |
出典:労働基準法第37条(割増賃金)・第115条・附則第143条(賃金請求権の消滅時効)。
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求人を紹介してもらう次の転職で内定を勝ち取るために
同じ失敗をくり返さないためには、求人を見る目と、前の職場のことを前向きに話す準備の両方が必要です。
求人票で必ず見ること
| 見るところ | 安心できる書き方 | 注意したい書き方 |
|---|---|---|
| 固定残業代 | 「固定残業代3万円(20時間分)、超過分は別途支給」 | 「残業代込み」とだけ書いてある |
| 基本給 | 基本給の額が別に書いてある | 月給の総額しか書いていない |
| 残業の実際 | 「月平均10時間」など実績がある | 実績が書いていない |
固定残業代の時間数ごとの見方は、「固定残業20時間」・「固定残業30時間」・「固定残業45時間」の記事でくわしくまとめています。
職務経歴書の書き方(ビフォー・アフター)
| 書き方 | |
|---|---|
| ビフォー | 残業が多く、待遇にも不満があったため退職。 |
| アフター | 月平均40時間の残業の中で、受注の入力を1日80件こなしました。作業の手順を見直し、入力のミスを月10件から2件に減らしました。 |
不満ではなく、その環境で何をやりとげたかを数字で書きます。
面接での答え方(退職の理由)
前の会社を責めるのではなく、次に何を大切にしたいかを話すと、前向きに伝わります。
出す前・話す前のチェックリスト
- 求人票の固定残業代の時間と金額を確かめた
- 超過分が別に払われるか確かめた
- 職務経歴書に、数字でやりとげたことを書いた
- 退職の理由を、前向きな言い方で話せる
- 面接で聞きたいこと(残業の実際)を用意した
まとめ:「込み」は、中身を確かめるまで信じない
固定残業代は、決まりを守れば正しいしくみです。ただ、最高裁判所の判決は、どこまでが残業代か区別できない形は、残業代を払ったことにならないと示しています。
この記事のポイント
- 「込み」と言うだけでは、残業代を払ったことにならない
- 有効かどうかは、区別・書き方・実際の残業との差で決まる
- 残業代を請求できるのは給料日から3年まで
- 次の求人では、時間数・金額・超過分の扱いを必ず確かめる
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固定残業代は違法なのですか?
違法ではありません。通常の給料と残業代の部分が区別でき、超過分が払われるなど、決まりを守った形なら認められます。
どんな場合に固定残業代が無効になりますか?
どこまでが残業代なのか区別できない場合などです。最高裁判所は、区別できない以上、割増賃金が払われたとはいえないと判断しています。
「残業代込み」と口で言われただけです。大丈夫ですか?
口で言われただけでは不十分なことがあります。雇うときの書面や給料の明細で、何時間分・いくらかを確かめてください。
固定残業代の時間をこえて働いたら、どうなりますか?
こえた分の残業代は、別に払われる必要があります。払われていない場合は、相談先に聞いてみてください。
残業代はいつまで請求できますか?
給料日から3年までです(2020年4月より前に支払日がある分は2年)。
どこに相談すればいいですか?
総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署の中)に無料で相談できます。弁護士への相談は、法テラスで窓口を案内してもらえます。
面接で、前の職場の残業のことを話してもいいですか?
話してかまいません。前の会社を責めるのではなく、次に何を大切にしたいかを前向きに伝えましょう。
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