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しくじり転職2026-11-03 公開 | 約10分で読めます

【裁判例】長時間労働の責任が会社に問われたケース|「残業は自己責任」ではない理由と、次の転職で防ぐ方法

監修 ・ 人材紹介事業 責任者 木下美紀 しくじり転職 【裁判例】長時間労働の責任 が会社に問われたケース samurai HR | 2026-11-03

終電で帰り、朝いちばんに出社する。眠れない日が続いても、「自分の要領が悪いから」と誰にも言えずに働きつづける。裁判所は、会社には社員の心身の健康を損なわないよう注意する義務があるとし、長時間労働を放置した会社の責任を認めてきました。判決の考え方と国の決まり、いま追い詰められている人がやること、次の転職で同じことを防ぐ方法と内定を勝ち取る準備をまとめました。

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よくある流れ:「みんな残っている」から抜けられない

長時間労働のしくじりは、次のような流れで起きることが多くあります(公的な判決や相談の例をもとにした、よくある流れです)。

よくある流れ 入社 残業が当たり前の 職場に入る 慣れ 申告する時間を 少なめに書く 不調 眠れない・ 食べられない 限界 休めないまま 体や心をこわす
本人が「自分のせい」と思いこみ、残業時間を少なく申告することが、しくじりを深くします。

20代の転職では、「まだ若いから体力で乗り切れる」「先輩も残っているのに自分だけ帰れない」と考えて、無理を続けてしまうことがよくあります。残業の記録の問題は、「タイムカードと残業代」の裁判例の記事で取り上げています。

木下美紀人材紹介事業
責任者

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木下美紀

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裁判所の判断1:会社には、社員の心身の健康を守る義務がある

長時間労働で社員がうつ病になり、亡くなった事件で、最高裁判所は会社の責任を認めました。

争点裁判所の判断
どんな事件か新卒2年目の社員が、日中は打ち合わせで埋まり、資料づくりは定時のあとになり、長時間の残業が続いた。うつ病を発症して亡くなり、両親が会社に損害賠償を求めた(最高裁判所 第二小法廷 平成12年3月24日)
会社の義務会社は、仕事による疲労や心理的な負担が積み重なって、社員の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。上司など仕事を指揮する人は、この義務に沿って権限を使う
上司の対応申告の残業時間が実際よりかなり少ないこと、徹夜もあること、健康状態の悪化を知りながら、「帰って眠り、終わらなければ翌朝早く来る」と指導しただけで、仕事の量を調整しなかった
結論長時間労働と亡くなったことの因果関係を認め、会社の損害賠償の責任を認めた原審の判断を正当とした

残業時間を少なく申告していても、上司が実態を知っていれば、会社の責任はなくなりません。

出典:最高裁判所 第二小法廷 平成12年3月24日判決(厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例・過重労働)。

裁判所の判断2:通院を言わなかったことを理由に、賠償は減らせない

次の事件では、本人が通院を会社に伝えていなかったことの扱いが争われました。

争点裁判所の判断
どんな事件か休日や深夜を含む長時間の時間外労働が続いてうつ病になり、休職の期間が終わったとして解雇された。本人は、解雇の無効と、会社の安全配慮義務違反による損害賠償などを求めた(最高裁判所 第二小法廷 平成26年3月24日)
原審(高等裁判所)の判断神経科への通院や診断名を上司や産業医に伝えていなかったことを本人の落ち度とみて、賠償の額を減らした
最高裁判所の判断通院や診断名の情報はプライバシー性が高く、会社に言わずに働き続けるのがふつう。本人は体調不良で休みをくり返し、仕事の軽減を申し出て、産業医や健康診断でも症状を伝えていた。言わなかったことを理由に賠償を減らすことはできないとして、原審の判決を破棄し、差し戻した
裁判所が見たこと 働き方 残業の長さ、 負担の重さ 会社の認識 不調に気づけた きっかけ 本人の伝え方 休みや申し出で 伝わっていたか
病名を言っていなくても、体調不良で休みや軽減を申し出ていれば、会社は気づけたとされました。

出典:最高裁判所 第二小法廷 平成26年3月24日判決(裁判所「裁判例検索」判示事項・裁判要旨)。

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国の決まり:残業の上限と、80時間・100時間の意味

法律と国の基準には、いくつかの時間の線があります。

決まり内容
安全への配慮(労働契約法第5条)会社は、働く人が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をする
残業の上限(労働基準法第36条)原則月45時間・年360時間。特別な事情があるときでも、年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均が80時間以内
医師の面接指導(労働安全衛生法第66条の8)週40時間を超える労働が月80時間を超え、疲れがたまっている人が申し出たら、会社は医師の面接指導を行い、労働時間の短縮などの措置をとる
労災の認定基準(脳・心臓疾患)発症の前1か月に100時間、または2〜6か月の平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連が強いとされる

月80時間を超える残業が続く職場は、国の決まりの上でも健康に危険がある状態です。固定残業代の読み方は「固定残業45時間」の記事へ。

出典:労働契約法第5条、労働基準法第36条、労働安全衛生法第66条の8(e-Gov法令検索)、厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A(面接指導)、厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」(令和3年9月)。

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全国のデータ:1年で1,300件が労災と認められている

脳・心臓の病気と精神障害で労災と認められた件数は、1年で1,310件(過労死等の全体)でした。

過労死等の労災の件数(令和7年度) 脳・心臓疾患の請求 1254件 脳・心臓疾患の支給決定 217件 精神障害の請求 4958件 精神障害の支給決定 1082件
支給決定は、労災と認められた件数。

うち、脳・心臓疾患で亡くなった人は67件、精神障害での自殺(未遂を含む)は76件でした。数字に出ない不調は、このさらに外側にあります。

出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」(2026年7月15日公表)。

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いま同じ状況なら:やることと相談先

残業が月80時間に近く、眠れない、食べられない、といった状態なら、まず休むことと、記録を残すことを優先してください。

やっておくこと

  • 出社と退社の時刻を、会社の記録とは別に自分のスマホなどに残す
  • 眠れない日や通院した日をメモしておく
  • 上司に、体調不良と仕事を減らしてほしいことを、日付の残る形で伝える(病名まで言う必要はない)
  • 残業が月80時間を超えたら、医師の面接指導を申し出る
  • 病院に行き、診断書をもらう
窓口相談できること
こころの耳(厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト)電話・SNS・メールで、心の相談を匿名・無料で受けている
労働条件相談ほっとライン(厚生労働省の委託事業)長時間労働による健康の問題や残業代の不払いを、平日の夜と土日も無料で相談できる
総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署の中)働く条件のトラブル全般
労働基準監督署残業の上限を超えている、残業代が払われないなど。労災の申請の窓口でもある

次の転職で内定を勝ち取るために

入る前に残業の実態を確かめることと、体調を崩した経緯を前向きに伝える準備の両方が大切です。

入る前に確かめること

確かめること安心できる答え注意したい答え
部署の月平均の残業時間部署ごとの数字を答えてくれる「人による」で終わる
残業の記録のしかたパソコンのログなどで自動的に残る自己申告で、上司の承認が必要
不調のときの体制産業医や相談の窓口があり、仕事を調整した例がある「体調管理も仕事のうち」と言われる
面接でこの答えなら考え直す 部署の残業時間を聞いても、具体的な数字が出てこない 残業は自己申告で、申告しにくい雰囲気があると分かる 「体調を崩すのは本人の管理の問題」という言い方をされる 月80時間を超える月が年に何回もあると分かる
残業の数字と記録のしかたを隠さない会社ほど、長く働けます。

印象を下げない聞き方は「面接で残業を聞くのはやめとけ?」の記事へ。

職務経歴書の書き方(ビフォー・アフター)

書き方
ビフォー長時間労働で体調を崩し、休職ののち退職。
アフター広告の企画チームで2年間、月に約10件の提案資料の作成を担当。資料のひな形を作って作成の時間を3割ほど短くし、チーム全体で使えるようにしました。

職務経歴書には、体調を崩したことではなく、担当した仕事と工夫したことを書きます。休職の理由は、面接で短く話せば十分です。

面接での答え方(退職の理由)

答え方の例
前の職場では企画の仕事を2年間担当しましたが、残業が月80時間を超える状態が続き、体調を考えて退職しました。いまは医師からも問題ないと言われています。次は、仕事の量を部署で調整しながら、長く力をつけられる環境で働きたいと考えています。

いまは働ける状態であることと、次にどう働きたいかを一緒に伝えると、前向きに受け取られます。前の会社を責めず、事実と希望だけを話します。

出す前・話す前のチェックリスト

  • 応募先の求人票で、固定残業代の時間数と「残業の有無」を読んだ
  • 面接で、部署の月平均の残業時間と記録のしかたを聞く準備をした
  • 職務経歴書に、担当した仕事と工夫したことを数字で書いた
  • 退職の理由を、1分ほどで前向きに話せる
無料・メールで届きます入社前チェックシート(18項目)求人票8項目・面接6項目・内定後4項目。応募の前に、1枚で確認できます。 メールで受け取る

まとめ:残業の限界を決めるのは、本人の根性ではない

残業の限界は、本人の根性ではなく、会社が社員の健康を守る義務で線が引かれています。

この記事のポイント

  • 会社は、仕事の負担が積み重なって社員の健康を損なわないよう注意する義務を負う
  • 上司が長時間労働と不調を知りながら仕事の量を調整しなければ、会社の責任になる
  • 通院や病名を会社に言っていなくても、賠償を減らす理由にはならないとされた
  • 月80時間を超えたら医師の面接指導を申し出られる
  • いま苦しいなら、休むことと記録を残すことを優先し、公的な窓口に相談する

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よくある質問

長時間労働で体調を崩したら、会社に責任を問えますか?

裁判所は、会社には社員の心身の健康を損なわないよう注意する義務があるとし、長時間労働を放置した会社の責任を認めてきました。個別のケースは、記録をそろえて公的な窓口に相談してください。

残業時間を少なく申告していました。それでも会社の責任になりますか?

上司が実際の残業や不調を知っていたのに手を打たなかった事件で、会社の責任が認められています。出社・退社の時刻を自分で記録しておきましょう。

通院していることを会社に言っていません。不利になりますか?

通院や病名を言わなかったことを理由に賠償を減らすことはできない、とした最高裁判所の判決があります。体調不良や仕事の軽減を申し出ていれば、会社は気づけたとされました。

残業は月に何時間までですか?

法律の原則は月45時間・年360時間です。特別な事情があるときでも、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内が上限です。

医師の面接指導は、誰が受けられますか?

週40時間を超える労働が月80時間を超え、疲れがたまっている人が申し出ると、会社は医師の面接指導を行うことになっています。

いま毎日終電で、眠れません。どうすればいいですか?

まず休むことと、病院に行くことを優先してください。こころの耳や労働条件相談ほっとラインは、夜や土日も匿名・無料で相談できます。

休職したことは、次の面接で話したほうがいいですか?

聞かれたときに短く話せば十分です。いまは働ける状態であることと、次にどう働きたいかを一緒に伝えましょう。

残業の少ない会社を探したいです。

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木下美紀
監修:木下美紀(samurai HR 人材紹介事業 責任者) 年間100名の求職者の転職を支援しています。 執筆:samurai HR 編集部(株式会社SAMURAI不動産/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-319169)。20代・30代の未経験からの転職を支援しています。

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