「業務委託」の求人はやめとけ? 求人票の読み方と見送る線
「月収40万円以上も可能」「未経験OK」「雇用形態:業務委託」。求人サイトで、正社員の求人と並んで出てくることのある書き方です。業務委託は雇われて働く形ではないため、残業代や有給休暇、会社の社会保険といった守りが、原則として付きません。そのことを知らずに応募すると、思っていた働き方と大きくずれます。ここでは、雇用とのちがいと、2024年11月に始まったフリーランスを守る法律を整理し、手取りを計算で比べたうえで、求人票と面接で確かめることと「この条件なら見送る」線を示します。
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「業務委託」とは
業務委託は、会社に雇われるのではなく、個人の事業者として仕事を引き受ける契約です。会社と働く人は「雇う側と雇われる側」ではなく、「仕事を頼む側と受ける側」という対等な取引の関係になります。
求人でよく見る書き方
| 書き方 | 読み方 |
|---|---|
| 雇用形態:業務委託 | 雇われる契約ではない。個人の事業者として働く |
| 正社員・業務委託(応相談) | どちらの契約になるのか、応募の前にはっきりしない |
| 完全報酬制(業務委託) | 成果が出なければ報酬がない形。最低の保障もない |
| 業務委託からスタート、のちに正社員登用あり | 登用の条件と、これまでに登用された人数を聞く |
責任者
法律の位置づけ:雇われる人との差と、新しい法律
雇われて働く人(労働者)には、労働基準法などの守りがあります。業務委託は雇用ではないため、この守りが原則として及びません。ただし、契約の名前が業務委託でも、実際の働き方が雇われている人と同じなら、労働者として扱われることがあります。
| 項目 | 雇われて働く人 | 業務委託 |
|---|---|---|
| 最低賃金・残業代 | ある | 原則なし(報酬は取引で決める) |
| 有給休暇 | ある | 原則なし |
| 雇用保険・会社の健康保険と厚生年金 | 条件を満たせば加入 | 原則なし(国民健康保険・国民年金に自分で入る) |
| 税金 | 会社が給料から差し引く | 自分で確定申告をする |
| 契約の終わり | 解雇には厳しい決まりがある | 契約の定めによる(新しい法律で予告の決まりあり) |
労働者かどうかは「実態」で見る
国の研究会の報告では、仕事を断る自由があるか、仕事の進め方を細かく指示されるか、働く時間や場所を決められているか、報酬が働いた時間に対して払われているかなどから判断するとしています。
2024年11月から、フリーランスを守る法律が始まった
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 取引の条件を示す | 仕事の内容・報酬の額・支払日などを、書面やメールで示す |
| 報酬の支払日 | 成果を受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に決めて払う |
| 募集の情報 | うその表示や、誤解を招く表示をしない。正確で新しい情報にする |
| 途中でやめるとき | 6か月以上の契約を途中で解除したり更新しなかったりするときは、原則30日前までに予告する |
出典:民法第632条・第643条・第656条、労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年)、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2024年11月1日施行)、厚生労働省・公正取引委員会の説明資料。
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求人を紹介してもらう全国のデータ:業務委託で働く人はどのくらいいるか
国の統計で、フリーランスの数がはじめて調べられたのは2022年です。本業がフリーランスの人は209万人で、働く人全体の3.1%でした。
| 項目 | 全国の数字 |
|---|---|
| 本業がフリーランスの人 | 209万人 |
| 働く人に占める割合 | 3.1% |
働く人のおよそ30人に1人です。多くは経験や専門の技術を持つ人で、未経験の20代が最初の仕事として選ぶ形は、まだ少数といえます。
出典:総務省「令和4年就業構造基本調査」(2022年10月1日時点)。
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計算で見る:報酬40万円と月給28万円の手取り
業務委託の報酬は、雇われて働く人の給料と同じ物差しでは比べられません。経費や保険料、休んだ日の分を、自分で負担するからです(次の数字は、考え方を示すための計算の例です)。
| 業務委託(報酬40万円) | 正社員(月給28万円) | |
|---|---|---|
| 交通費・スマホ代・パソコンなど | 自分で払う(例:月3万円) | 会社が出すことが多い |
| 健康保険と年金 | 全額を自分で払う | 会社と半分ずつ |
| 働いた時間 | 例:月240時間(休みは自分で決める) | 例:月170時間(残業代は別に出る) |
| 時給にすると(経費を引いたあと) | (40万円−3万円)÷240時間=約1,540円 | 28万円÷170時間=約1,650円 |
| 休んだ日 | その分の報酬はない | 有給休暇なら給料が出る |
計算で見えること
- 報酬の額が大きくても、時給にすると正社員より低くなることがある
- 保険料と経費を引いた「使えるお金」で比べる
- 成果で決まる報酬は、月によって大きく上下する
成果だけで報酬が決まる形は、「完全歩合」の記事でもくわしく取り上げています。
なぜ「やめとけ」と言われるのか
専門の技術がある人が、自分で仕事を選んで受ける業務委託は、自由で収入も伸ばしやすい働き方です。一方で、未経験の人を集める業務委託の求人には、次のような声があります。
| 入ってから聞く声 | 起きていること |
|---|---|
| 出社の時間も服装も決められている | 雇われた人と同じように指示されているのに、契約は業務委託 |
| 成果が出ない月は、報酬がほとんどない | 最低の保障がなく、生活が安定しない |
| 研修費や道具代を先に払った | 仕事を始める前に、お金の負担がある |
| 急に「来月から仕事はない」と言われた | 契約の終わり方が、書面で決まっていない |
| けがをしたのに、補償がなかった | 労災の保険に入っていない |
とくに1つ目は、働き方は雇用なのに、守りだけが外れている状態です。けがへの備えとしては、フリーランスが自分で入れる労災保険の特別加入という制度もあります。
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求人を紹介してもらう求人票の実例を読む
業務委託の書き方を、3つの型に分けて読みます(実在の会社の求人ではなく、よくある書き方の例です)。
| 求人票の書き方 | 読み方 | 面接で聞くこと |
|---|---|---|
| 月収40万円以上可能! 未経験歓迎(業務委託) | 「可能」は上の例。平均や最低がわからない | 始めて半年の人の報酬の平均と、いちばん少ない人の額 |
| 業務委託契約、1件あたり報酬3,000円、月末締め翌月末払い、契約書を事前に交付 | 報酬の決め方と支払日が書いてある | 1日にこなせる件数の目安と、経費の負担 |
| 勤務時間 9:00〜18:00、週5日出社、雇用形態は業務委託 | 時間と場所を決められていて、雇用に近い | なぜ雇用ではなく業務委託なのか |
3つ目のように時間と場所が決まっている業務委託は、働き方の実態と契約の形がずれている可能性があります。
未経験歓迎希望に合う求人を、ご紹介します希望の職種と連絡先を入れるだけ。営業・事務・IT・施工管理などから、担当者がお探しします。 求人を紹介してもらう求人票と面接で確かめること
契約の形と、そう決めた理由
雇用か業務委託か、なぜその形なのかを聞きます。
報酬の決め方と支払日
1件いくらか、月いくらか、締め日と支払日を確かめます。
経費とお金の負担
交通費・道具・研修のお金を誰が出すかを聞きます。
契約の期間と終わり方
途中でやめるときの予告や、違約金の有無を確かめます。
聞きにくい契約の中身は、担当のエージェントが会社に確かめます
- 雇用で応募できる別の求人があるか
- 同じ仕事をしている人の報酬の実際
- 正社員に登用された人の数と時期
契約したあとにやること
業務委託で働き始めたら、自分が事業者であることを前提に、記録とお金の管理を自分でします。
| 自分でやること | どこで手続きするか |
|---|---|
| 健康保険・年金への加入 | 住んでいる市区町村の窓口 |
| 開業の届け出・確定申告 | 税務署 |
| けがへの備え(特別加入) | 特別加入の団体を通じて労働基準監督署へ |
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求人を紹介してもらう困ったときの相談先
報酬が払われない、急に契約を切られた、実態は雇用なのに守りがない、といったときは、公的な窓口に無料で相談できます。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業) | 報酬の未払い、契約の打ち切りなど、取引のトラブル |
| 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署の中) | 働き方が雇用に近いのではないか、という相談 |
| 労働基準監督署 | 実態が労働者で、残業代などが払われていないおそれがあるとき |
| ハローワーク | 求人の表示と、実際の契約が大きくちがうとき |
相談には、求人の画面の保存、契約書、報酬の明細、毎日の仕事のメモを持っていくと話が早く進みます。法律の判断が必要なことは、この記事では答えられません。
無料・メールで届きます入社前チェックシート(18項目)求人票8項目・面接6項目・内定後4項目。応募の前に、1枚で確認できます。 メールで受け取るまとめ:業務委託は「守りがない分、条件を書面で」
「業務委託」の求人で見ること
- 雇用か業務委託か、なぜその形なのか
- 報酬の決め方・支払日が書面で示されるか
- 経費や研修のお金を誰が負担するか
- 時間や場所を細かく指示されないか
- 契約の期間と、途中でやめるときの決まり
業務委託は、自分で仕事の進め方を決められ、条件が書面ではっきりしているなら、選んでよい働き方です。未経験で、まず安定して力をつけたいなら、雇われて働く求人と並べて比べてから決めましょう。正社員かどうかの見分け方は「正社員登用あり」の記事もどうぞ。
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業務委託とアルバイトは何がちがいますか?
アルバイトは雇われて働く形なので、最低賃金や残業代、有給休暇などの守りがあります。業務委託は個人の事業者として仕事を受ける取引で、これらは原則として付きません。
業務委託でも残業代はもらえますか?
原則としてもらえません。ただし、契約の名前が業務委託でも、実際の働き方が雇われている人と同じなら、労働者として扱われ、残業代が払われるべきとされることがあります。
労働者かどうかは、どうやって決まりますか?
仕事を断る自由があるか、進め方を細かく指示されるか、時間や場所を決められているか、報酬が働いた時間に対して払われているか、などの実態から判断されます。
業務委託の報酬は、いつ払われますか?
2024年11月に始まった法律で、成果を受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に支払日を決めて払うことになりました。
業務委託の契約を、急に打ち切られました。
6か月以上の契約を途中で解除したり更新しなかったりするときは、原則として30日前までに予告する決まりがあります。フリーランス・トラブル110番に相談できます。
業務委託だと、健康保険や年金はどうなりますか?
会社の健康保険や厚生年金には原則として入れないため、国民健康保険と国民年金に自分で入り、保険料を全額払います。
業務委託で働く人は、どのくらいいますか?
本業がフリーランスの人は209万人で、働く人の3.1%でした(総務省「令和4年就業構造基本調査」)。
研修費を払えば仕事を紹介すると言われました。
仕事を始める前にお金を払うよう求められる求人は、慎重に考えましょう。払う前に契約書の中身を確かめ、迷ったら公的な窓口に相談してください。
未経験の20代でも、業務委託から始めてよいですか?
専門の技術がまだない時期は、報酬が安定しにくい形です。教わる期間や最低の保障があるかを確かめ、雇われて働く求人と比べてから決めましょう。
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